東美濃のストーリー

東美濃の地酒、器、食は、美しい自然とその恵み、そして、そこで暮らしてきた人々が育んだ文化によってもたらされました。
ここでは、そんな東美濃のバックグラウンドをご紹介します。

地層と地形

東美濃の地酒を醸す美しい水、そして多様な陶磁器の生産を支える陶土、
質の高い木材を得ることができる山々。

全ては長い歳月をかけて形作られた「土」の恵み、
すなわちこの地の地層と地形によってもたらされます。

東美濃地域の立地や地形は、気候という「空」の恵みをもたらし、
この地の木工や農業の基盤を提供します。

土の恵み

 東美濃の主な地質構成は、花崗岩類と濃飛流紋岩、その後に形成された瑞浪層群、さらに土岐砂礫層などに代表される瀬戸層群により構成されます。
 最初に形作られたのは花崗岩類と濃飛流紋岩で、特に白亜紀後期(8200-6800万年前)に活発化したマグマ活動の中で形成されました。特にマグマだまりにより生まれる花崗岩は、ウランやトリウムなどの放射性物質が鉱石の中に含まれており、この地に豊かな温泉(放射能泉)をもたらしています。
 中津川・恵那地域の一帯は苗木花崗岩・伊奈川花崗岩を中心に、この花崗岩帯が形成され、特に蛭川地域では石材の産出や石工が盛んになりました。そして、醸造に適した軟水、青川と呼ばれる付知川の清流に代表されるような青く澄んだ清流をこの地にもたらしました。
 瑞浪を中心に、恵那市南部や可児市に広がる海の化石を含んだ地層は、中新世前期から中期に形成された「古瀬戸内海」の海底に堆積した瑞浪層群と呼ばれる地層で、堆積物等が持つミネラルを含んだ地質は、中軟水の水質を瑞浪の酒蔵に供給しています。その後、中新世後期~鮮新世には、東美濃地域一帯に「東海湖」と呼ばれる湖が現在の濃尾平野を中心に広がりをみせ、まさ化(風化)して流れ込む花崗岩の砂礫などや有機物を堆積させ、地層を形成します。ここで形成された地層は東海層群、特に東美濃地域の地質は瀬戸層群という名称で呼ばれ、下部層の土岐口陶土層と上部層の土岐砂礫層を構成しました。
 土岐口陶土層は中津川から土岐・多治見までの一帯に広がりを見せ、おもに石英粒を含む粘土(蛙目粘土)、炭質物を含む粘土(木節粘土)、石英砂(珪砂)を産出し、この地域に豊富な製陶原材料を供給し、日本の中心的な陶磁器生産地としての基盤を構成しています。

中生代以降に形成された、東美濃地域の地質的変遷ともたらした影響

美しい山々と局地気候

 東美濃地域の美しい自然の起伏がもたらす地形的な一体感や豊富な水は、活断層の存在が大きな影響をもたらしています。
 地震などの自然災害をもたらす活断層は、近くの動きやズレにより今日の阿寺山地、恵那山をはじめとした木曽山脈、屏風山、赤河山地、そしてこれらの産地に囲まれるように形成される渓谷や盆地といった美しい山々からなる地形をもたらすとともに、その破砕帯(断層の裂け目)から噴出する美しい水は、人々の暮らしに潤いをもたらし、豊富な水を必要とする地酒の醸造環境を提供しました。
 末岡茂(東濃地科学センター土岐地球年代学研究所 研究員)氏によると、東美濃地域における多くの酒蔵は、その断層の破砕帯に立地し、地質と水の恵みを受けているとのことでした。
 濃尾平野の北東部に位置し、木曽山脈、阿寺山地、御嶽山地等の標高の高い山々を背後に抱える盆地の地形は、夏季に局地的な豪雨をもたらす条件を整えます。
 特に、中津川市の山間部にもたらされる豪雨は、尾張藩によって保護・管理され、伊勢神宮の式年遷宮にも用いられる木曽ヒノキを生育する上で重要な条件となります。
 盆地の気候がもたらす寒暖差は、農業生産にとっても重要な要素であり、8世紀に皇室に献上された記録の残る次米田をはじめとした穀類の生産のほか、様々な伝統野菜や寒天の生産が行われています。

岐阜県の地質構成と酒蔵の立地(左から河川、断層、主な地質の分布)

*末岡茂(東濃地科学センター土岐地球年代学研究所 研究員)氏作成資料に加筆

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